2025年3月初旬、EUR/JPY(ユーロ/円)相場が突如として急騰し、市場をざわつかせました。2月中旬には160.28円まで上昇したものの、その後156円台まで反落。ところが、USD/JPY(米ドル/円)が下がり続ける一方でEUR/JPYは異なる動きを見せ始めます。なんと、3月4日には159.14円、3月5日には160.72円まで急騰。実に3.03%も上昇し、それ以降160円台をキープする異例の展開に。面白いことに、USD/JPYがじわじわ円高に進むなか、EUR/JPYはまったく逆方向へ飛び出しました。この謎の値動き、一体何が起こっていたのか?
今回は、背景にある経済要因、投機筋の動き、市場心理、さらには他の通貨との相関性まで、あらゆる視点からこのミステリーを解き明かしていきます。

(Google Financeより)
経済イベントの影響
日銀の金融政策と市場の動揺
日本銀行(BOJ)は1月に17年ぶりの利上げを実施。短期金利を-0.25%から+0.5%に引き上げました。これにより、日銀の「超低金利時代の終焉」が意識され、市場では「次の利上げはいつ?」という憶測が飛び交っていました。
さらに、3月5日には日銀の内田副総裁が「経済・物価の動向次第で利上げを継続する」と発言。もっとも、「毎回の会合で利上げを行うわけではない」との慎重なコメントも付け加えられ、市場は「日銀は利上げペースを抑えるのでは?」と解釈しました。
ただ、これだけなら普通の話。しかし、ここに絡んできたのが「日本の経済指標の強さ」。
- 2023年10月-12月のGDP成長率:年率+2.8%(市場予想を上回る)。
- 1月のコア消費者物価指数(CPI):前年同月比+3.2%(1年半ぶりの高水準)。
- 賃金の上昇トレンド:2024年のベース給与の伸び率は実に30年ぶりの高水準、2025年も大企業平均+5%超の賃上げ見込み。
これらのデータは、日銀が「賃金上昇の持続」を確認できれば追加利上げに踏み切る可能性を示唆しており、円買いを後押しする要因となりました。
ECB(欧州中央銀行)の政策とユーロ高の背景
一方、欧州ではまったく違う動きが起きていました。
- ECBは高金利維持のスタンスを崩さず
- ドイツが約5,000億ユーロ(約80兆円)のインフラ基金創設を検討
- EU全体で1,500億ユーロ(約24兆円)の共同借入計画が進行
これらのニュースは、「欧州の景気は想定より強いのでは?」という楽観ムードを生み、ユーロ買いを誘発しました。特に、ドイツの財政規律緩和は「ゲームチェンジャー」とまで言われ、長期金利を押し上げ、ユーロの魅力を強化しました。
実際、ユーロは対ドルで約3ヶ月ぶりの高値1.07ドル台に急伸。3月第1週は対ドルで実に16年ぶりの大幅上昇を記録しました。
さらに、ユーロ高は対円だけでなく、他の主要通貨に対しても見られました。
- ユーロ/ポンド(EUR/GBP):ユーロがポンドに対しても上昇し、0.86ポンド台まで上昇。
- ユーロ/スイスフラン(EUR/CHF):ユーロはスイスフランに対しても上昇し、1.08フラン台を記録。
- ユーロ/ノルウェークローネ(EUR/NOK):ドイツの財政支出発表を受けて、ノルウェークローネに対しても急伸。
- ユーロ/スウェーデンクローナ(EUR/SEK):スウェーデンクローナに対してもユーロが強含み。
米国ではトランプ政権による関税リスクや景気減速懸念が浮上し、ドル売りが加速。結果的にユーロが「ドル売りの受け皿」となり、対円でもユーロが買われる展開に。
投機筋のポジション変化
ここで重要なのが、投機筋の動き。
- IMM通貨先物(CFTC建玉報告):
- 2023年までは過去最大の円売り越し(ショート)が積み上がっていたが、2024年に入り一転して過去最大の円買い越し(ロング)に転換。
- 2月末時点で円買い越しは約96,000枚(約80億ドル相当)、過去30年で最大。
- 大口投資家の動き:
- ヘッジファンド勢は「日銀がタカ派化する」と読んで円買いを強めた。
- しかし、バンク・オブ・アメリカは「長期的には円安の流れが続く」と指摘。
つまり、短期的には円買いの流れが強かったが、ユーロの強さには勝てず、EUR/JPYが急騰する形となりました。
市場センチメントと相関分析
投資家心理はユーロ高・円高で揺れ動く状態に。
- SNS上の議論:「3月は例年円安傾向」との指摘が多い。
- オプション市場:ユーロプットオプションの需要が低下し、ユーロ買いの楽観ムードが強まる。
- リスクオフ局面でもユーロは売られず、円との綱引き状態が続く。
さらに、EUR/USDとUSD/JPYの動きを考えると、
- ユーロが対ドルで上昇 → ユーロ円も押し上げ。
- ドル円は円高方向へ → 円高圧力はあるが、ユーロの強さが上回る。
結果、EUR/JPYは急騰した、というわけです。
3月4日~5日の急騰の背景
3月4日と3月5日にEUR/JPYが急騰したのは、以下の複数の要因が絡み合った結果です。
ドイツの財政拡大とECBの政策スタンス
- 3月4日:ドイツ政府が5,000億ユーロ(約80兆円)規模のインフラ基金を創設する計画を発表し、さらにEU全体で1,500億ユーロ(約24兆円)の共同借入計画が進行中であることが報じられました。
- 影響:「欧州の経済成長が加速するのでは?」という期待が高まり、ユーロ買いが活発化。
- 3月5日:ECB(欧州中央銀行)関係者が「早期利下げは慎重に進める」と発言。
- 影響:「ECBは当面高金利を維持する」という観測が強まり、ユーロ買いがさらに加速。
日銀の政策スタンス
- 3月5日:日銀の内田副総裁が「経済・物価の動向次第で今後も利上げを継続する」と発言。ただし、「毎回の会合で利上げするわけではない」とも述べた。
- 影響:市場は「日銀は慎重なスタンスを維持し、急激な金融引き締めには動かない」と受け取り、円買いの勢いが抑制。
投機筋の動き
- 3月4日~5日:投機筋(ヘッジファンドなど)がEUR/JPYのロングポジション(買い)を積み増し。
- 影響:CFTCの建玉報告(IMM通貨先物)では、ユーロの買い越しが増加傾向にあり、特に円に対しての買いが強まっていた。
市場のセンチメント
- 3月4日~5日:「ドイツ財政拡大+ECB(欧州中央銀行)のタカ派スタンス=ユーロ買い」の構図が投資家の間で広がり、短期間で大きな買いが発生。
- 影響:ユーロ高の波が対円だけでなく、ドル、ポンド、スイスフラン、ノルウェークローネ、スウェーデンクローナなどにも波及。EUR/USDは1.07ドル台に上昇し、EUR/JPYも大きく上昇。
まとめ
3月初旬のEUR/JPYの急騰は、
- 日銀の利上げ観測と慎重な姿勢の綱引き。
- ECB(欧州中央銀行)の政策と欧州の財政拡大がユーロを押し上げ。
- 投機筋の円買いポジション増加が一時的に円高を誘発も、ユーロの強さに負ける。
- 市場のセンチメントがユーロ高を支持し、ユーロ円の独自の上昇トレンドを形成。
- ユーロは対円だけでなく、ポンド、スイスフラン、北欧通貨に対しても上昇。
今後も日銀の利上げの行方や欧州の財政政策が市場のカギを握るため、EUR/JPYの動きから目が離せません。


